「秒速5センチメートル」はロンド形式

初出2018年1月25日ブログ雑記林

「秒速5センチメートル」の第三話の表題作について考えてみた。この作品はロンド形式で作られている。元は音楽の用語である。同じ主題が繰り返し出現する形式である。A(主題)→B→A(主題)→C→A(主題)・・・といったように演奏される。BやCはエピソードと呼ばれる。「思い出は遠くの日々」(天門)もこれである。
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そうは言っても主題は完璧に同じで無い。映画は音楽と違ってストーリーが無いといけない。繰り返し登場するのは同じカットである。同じカットだったはずであるのに切り分けられ何回にも分けて登場する。

そう、半強引に音楽学的手法でこの映画を分析しようと言うものである。

細かすぎて見にくい画像となってしまった。ここでは大まかな色分けについて見ていただきたい。

まず新宿の高層ビル群について押さえておきたい。作中で二度登場する。二回とも同じカメラワークだが始めに登場するときは雪の舞う冬の夜で後半に登場するときは桜が舞う春の真昼である。まるで始め短調で演奏されたメロディーを長調で演奏するようだ。このシーンが大きな場面の転換を表している。

そして、その間に様々なシーンが走馬灯のように流れる訳であるが、二つのロンドと二つの二部形式のシーンに大別できる。ここでは大体の色使いで判別して欲しい。次から詳しく見ていく。

冬の夜の新宿

→ロンド1

→(ロケットの打ち上げシーンを間に挟む)

→ロンド2

→二部形式のシーン1

→春の昼の新宿

→二部形式のシーン2

ざっとこういう流れである。

先ず二つのロンドを見ていく。このように冬の夜のシーンが何度も登場する。その間に様々なシーンが入っていると言う構造だ。ロケットのシーンもエピソードのひとつとし二つを繋げて大きなロンドにしても良さそうだがその前後でははっきりとした違いがある。

順番にロンド1から見ていく。ここのエピソードは時系列的には二話の「コスモナウト」に相当する。主題の後に岩舟駅で別れた明里と貴樹が文通する様子が描かれる。やがて文通は途絶え岩船と種子島で各々の青春を送ることとなる。一旦主題が入り次のエピソードは花苗と貴樹のシーンである。ほぼ「コスモナウト」の総集編である。そしてまた主題が現れる。

主題は大人になった貴樹が雪の舞う東京をさまよい明里は電車でかつて貴樹が辿った道を東京へと向かう。そしてエピソードは中学時代の貴樹と明里、そして貴樹と花苗の回想である。主題は夜であるがエピソードが昼である。これの直前に夜明けの町がフラッシュされるカットがあるところからも明るい時間帯を連想される。

ここでロケットの打ち上げシーンが入る。これを境に雰囲気はガラリと変わる。

再び主題が入り社会人になった貴樹や明里が通勤している思われるエピソードが入る日が落ち蛍光灯の灯りだけの駅や夜のバス停である。水野理沙は深夜に帰宅する。その次に夜明けの町が描かれる。主題が入るわけだがここで動きが現れる。明里が婚約者と落ち合い貴樹に酒が入る。次のエピソードは車窓から駅のホームに「誰か」の姿を認める少年の姿の貴樹と制服姿でカブに乗った明里が恋敵である「誰か」の姿を認めるシーンである。思い出を引きずっているようだ。そして主題が入る。
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このロンドではほぼ白昼のカットは登場しない。主題はもちろん真夜中であるしエピソードも夜中か夜明けの日が完全に上りきらない時間である。要は朝早く出勤し夜遅くに退社するサラリーマンの見ている町の光景である。昼間は建物の中にいるのであろう。唯一白昼のカットとしてどこか見知らぬ町の昼間の光景がフラッシュする。しかし寂れた様子でもの寂しい。朝から深夜まで自宅と会社を往復するだけの生活のようだ。

次は「夢」のシーンである。序→A→B→Aの形式である。

宙を飛ぶ鳥が夢へと誘い雪原を駆ける明里と路地裏で立ち尽くす貴樹である。共に中学生当時の姿である。ここまでが「序」である。

それから教室の外を眺める二人が写し出され(A)公衆電話や郵便ポストの前に立つ二人がフラッシュ(B)し再び教室に戻る(A)。

この次に新宿の高層ビル群が写し出される。桜舞う春の白昼の場面である。

次に入るのがA→B→Aの二部形式2である。Aは出掛ける貴樹と明里であるそして踏み切りへと向かう。Bは渡すことができなかった手紙のシーンである。大切な一言がクローズアップされて映る。

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以上が半強引に音楽の理論で「秒速5センチメートル」の主題歌の部分を分析してみた結果である。こうしてみると音楽的な作品である。何度も「回帰」しているのが本作の特徴である。ちなみに踏み切りで分断されるシーンは「桜花抄」の冒頭部分の回帰である。

音楽的手法で書かれたアニメ作品~時間芸術としての「秒速5センチメートル」と「言の葉の庭」

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