音威子府駅 駅そばの出汁と歴史の香る駅

てかてかとしたログハウス風の駅舎は優しく輝いていた。昨夜の信号トラブルでひと苦労したが今ここに居るという感じだった。

ここの駅そばを食べると達成感があると言われている駅。営業時間が短い上に宗谷本線の本数が少ない。だが独特の黒い麺と味のよさで評判である。

跨線橋を渡ったところで出汁の香りがした。良かった、営業している。改札を通ってすぐにそれはあった。

メニューを見るとシンプルだ。かけそばに天ぷら、卵を載せていくスタイル。せっかくなので天たまそばを注文。おばちゃんが麺を取り出すがやけにどす黒い。これが噂に聞く音威子府そばか。ささっと湯がいてあっという間に出来上がり。駅そばらしいスピード感である。天ぷらと卵をのせればなんだか豪華になる。これぞ旅の楽しみ。

「ゆっくり座って食べてください」

後ろに椅子と机が用意されていた。ありがたい気遣い。しかし、私は違和感を感じた。駅そばというものは立って食べるものではないのだろうかと。立って食べてこそ旅の合間を縫っていただく駅そばではないかと。邪魔になってもなんだし私が好きな畳が敷いてあるところもあることだしそこで食べよう。

回りを見ても急いでいる人などいない。みんなそばを啜って一服している。そりゃそうだ。元々列車が数時間後の上に午前中の普通列車が運休になっている。急いで食べても仕方がない。

駅そばとは本来慌ただしいものだ。その起こりは横川軽井沢間の機関車の取り付け作業の合間にさっと食べれるものであった。青函連絡船があった頃は長旅の末に青森駅に着いたらさっと食べて連絡船にダッシュしていたそうだ。私は姫路駅の在来線で十分の乗り換えの時お世話になったりした。米原から新快速を乗り通した後にまた長旅が控えていたときで大変ありがたかった。

こうしてみると不思議である。乗り換えもなければ駅そばを食べるのに丁度いい停車時間がある列車もないこの駅で駅そばがあるのは不思議である。バスとの乗り換えもずいぶん余裕があるようだ。これなら注文があってから生麺からゆでていても時間に問題がない。

天北線資料室。ここに答えがあった。音威子府は嘗て天北線が分岐する道北の交通の要衝だった。当然乗り換え客で賑わったのだろう。模型を見ても列車が何本も停車しており活気に満ちていた。駅弁の立ち売りの写真も残っている。こういう駅には確かに駅そばは必要である。

駅そばの営業を続けること。それは音威子府駅の歴史、天北線の存在を今に伝える事でもある。湯がいたそばからは忙しい駅の臭いがした。

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