ぬくもり飛騨路号乗車

5月14日、JR東海の新しい観光に乗車した。といっても一般の特急型車両を用いたものでヘッドマーク以外外観に違いはない。また、車内もこれといった設備がない。

 

幾本もの「特急ひだ号」に挟まれて存在する「急行ぬくもり飛騨路号」。停車駅も同じくらい。いったいどっちが「限定的な」急行なのか問いたくなる。なぜか普通の急行の方が限定的なのだ。

発車番線は4番線。いつもはしらさぎ号等東海道線の特急が発着するホームで入線を待つ。すでに撮影のためにカメラを構えている人もチラホラいる。どうやら大阪方から入線のようだ。東京方の方にカメラを構えていたのでがっかり。確認しておいてよかった。

4両編成の列車は名古屋駅にのホームには短い。ホーム中程で停車した。先頭も最後尾も貫通型の4両編成。流線型の先頭車の窓が大きくその脇に小さなヘッドマークがあるのはJR時代を感じさせる。それに対しこれは国鉄時代の急行列車を彷彿させる。貫通扉には堂々としたヘッドマークの掲出されている。

写真撮影は程々にして車内に入る。今日は乗って寛ぐことに重きをおきたい。進行方向の右側の窓側を指定した。しかし何かおかしい。そう、岐阜から進行方向が変わるのだ。私の席は名古屋岐阜間は間違いなく進行方向右側なのだが高山線に入ると左側になってしまう。飛水峡の地球の彫刻や飛騨一宮のカーブの内側の田園風景を想像していただけに少しがっかりである。だがこれも何かの縁と思って反対側を楽しむとしよう。

 そうこうしているうちに出発の時間になった。北斗星等寝台列車の始発駅の停車時間を思うと大分短く感じられる。発車はお見送りの観衆が多いことを除けばごく普通の走りだし。カミンズ社製のエンジンを唸らせ名古屋駅を後にする。いつもは電車のモーター音と共に駆け抜けるこの区間だけに何か新鮮なものを感じた。

 お決まりのワイドビューチャイムの後に車掌からの案内放送が流れた。停車駅案内と車内販売についての放送。岐阜駅からワゴンが乗り込むらしい。岐阜県の特産品が主な内容のようだ。楽しみである。これぞ旅の醍醐味。ちょうどキリンビール名古屋工場前を通過したとき「キリンビールの岐阜に乾杯」(注:岐阜県限定販売のビール)と言ったのは上手い演出だ。

 この日はよく晴れていれ暑いくらいだ。濃尾平野ってこんなに美しかったっけと思うくらい晴れ渡っている。一宮を過ぎ木曽川を渡ると田んぼが広がる。以外と撮り鉄が少なかった印象である。

 木曽三川公園を眺め金華山が近づいたらもう岐阜駅。あっという間である。駅のホームには何やら被り物をした人がいる。車内販売の人らしい。観光列車の雰囲気が出てきた。

 岐阜を出ると高山線に入る。単線区間なので交換可能駅のポイントで揺れる揺れる。三脚が倒れてしまい動画の撮影が失敗。というわけで撮影できなかった区間が多い。

 金華山の上の岐阜城がくっきり見える。岐阜に来たと実感させられる。名古屋からは遠くに見えた山々が近くに迫り濃尾平野の奥の方まで来たと感じる。車内販売も岐阜県一色だ。そして車窓右側には犬山城が見えてきた。犬山、愛知県である。やっぱり隣の県らしい。

列車は日本ラインと並行する区間へと進みまもなく坂祝である。ひとつトンネルを抜けると有名な撮影ポイントを通過する。通称坂祝のポイント。私もキハ40系の6連回送を撮影しに来たことがある。トンネル飛び出しと曲線という二つの要素の組み合わせでなかなか迫力のある写真がとれる。その様子を見ると結構人がいるがまだまだ余裕がありそうな感じだ。四国の罵声合戦の話を聞くと平和が保たれたなと思う。

坂祝駅の堂々としたセメント工場を後にし美濃太田駅に滑り込む。太多線の多治見行きが止まっており懐かしい。ここで乗車のかたもチラホラいた。交通の結接点らしい。

さて、車内販売だが来る様子がない。どうしたのだろうか。準備に時間が掛かっているのか利用者が多いのか。それとも油を売っているのだろうか。

美濃太田を過ぎると一気に山岳路線ぽい雰囲気が出る。左手は崖、右手には山が近くに迫る。ようやく車内販売が回ってきた。「岐阜に乾杯」と「おつまみセット」を購入。千円ちょうど。これに自家製ケイヂャン(岐阜県の郷土料理)でカンペキ。

各都道府県毎に発売されているこのビールは旅の楽しみである。その土地に会わせた一杯。岐阜県は木をイメージしたらしい。飲んでみると確かに良い香りがする。薫製枝豆とのマリアージュがまた格別。薫製の香りを存分に引き立てる。素晴らしいビールだ。ケイジャンも安定の美味しさ。味噌のこってりした味に爽やかな森林の風。岐阜ですな。

 

最近の観光列車では定番となっているのが記念撮影用のプレート。多分に漏れずこの列車でも作製されていた。岐阜から乗り込んできた車内販売員を始めとする方々が各座席を回っていた。そして意外だったのはJR東海の車掌さんが楽しそうに接客しているということだ。東海道新幹線が大黒柱で現在は観光に特化した車両は在籍していない。JRのなかでもお堅いイメージがあるこの会社。社員さんも固い人が多そうな印象だ。ところが実際はそうとも言い切れないようだ。現場レベルではこういった乗って楽しい列車を望んでいるのかも知れない。今回は良い意味での発見があった。

私も撮影していただいた。寂しい隣の席はサルボボ達で賑やかにしていただいた。良い記念になった。

列車は飛水峡で一度停車した。いつもはすぐに通り過ぎてしまう絶景もまじまじと観察できる。神殿のような威厳を持った光景だ。今度乗車するときは是非進行方向右側、名古屋岐阜間は左側に乗車しよう。

 

飛騨金山を出るとまもなく下呂駅に到着である。ここでは20分以上停車する。なんと地元の学生のブラスバンドなどのおもてなし企画があるそうだ。このままのって行ってしまうのになんだか申し訳ないな。

列車はゆっくりとホームに滑り込む。山あいの温泉街の静かな駅、かと思ったら何かのお祭り騒ぎかというくらいの人、人、人。これは楽しい一時になりそうだ。

発車時刻を確認し車外へ出るとブラスバンドの演奏が始まったところだった。映画音楽っぽいが曲名は分からない。重厚なかっこいい曲である。そして隣にはキハ85系がエンジンを蒸かしている。カミンズエンジンと映画音楽っぽい曲、なかなか気分を盛り上げる組み合わせである。これから飛騨の入り口から山奥へと入っていく高揚感が高まる。

じっとしていてもなんなので車両先頭も眺めにいった。山奥の駅と堂々とした幌を誇示した貫通型の組み合わせはやはり国鉄の急行列車だ。そして演奏が心地よく山々にこだましている。

下呂温泉の観光PRということで地元中学生も活躍していた。タオルや銘菓「しらさぎ物語」まで入った袋を頂いた。おもてなしが息づいている土地はすごい。繰り返すが通り過ぎてしまう旅人なのに申し訳ない。

停車時間も残り僅かとなった。ブラスバンドの演奏からはあの名曲の前奏が流れてくるではないか。今の飛騨といえばこれ、映画「君の名は。」(新海誠監督、2016年)である。その主題歌である「前前前世」(RADWIMPS、2016年)の吹奏楽バージョン。これから聖地巡礼に行こうとする私が丁度聞きたかった。いい旅になりそう。

名残惜しいが発車時刻が近づいたので車内に戻る。

対向列車が二分ほど遅れているようだ。ブラスバンドの演奏は前々前世のリピート。発車まで続けていただけるようだ。指揮の先生が「あれ?」というふうにホウムの方を振り向きながらもう1回の指示を出す。あとから遅延の事聞いたらJRに対して「(伝えるのが)遅いよ!」と怒りそう。ほんとにご苦労様である。

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