新海作品の聖地について調べてみたら色々とわかった!

新海誠監督作品の聖地巡礼をしていて気になった。どういう訳か戦跡巡りになっているような気がしたのだ。そこで東京都立図書館で調べてみた。すると東京が軍都であった過去の姿が浮かび上がってきた。

代々木八幡宮 引き裂かれた悲しみの碑

小田急線の各停電車が路面電車のように細々と停まる新宿の高層ビル群に程近い住宅地。そこが「秒速5センチメートル」の舞台である。主人公達が小学生時代を過ごした街である。貴樹と明里は同じ中学校に進学する予定だった。然し明里は家庭の事情で本人の意志に反する転居を強いられ二人は離ればなれになって了う。
この代々木の地には住民が「意志に反する転居」を強いられた歴史が実在する。作中に登場する代々木八幡宮にそれを今に伝えるものが遺されている。

小田急線の各停電車が路面電車のように細々と停まる新宿の高層ビル群に程近い住宅地。そこが「秒速5センチメートル」の舞台である。主人公達が小学生時代を過ごした街である。貴樹と明里は同じ中学校に進学する予定だった。然し明里は家庭の事情で本人の意志に反する転居を強いられ二人は離ればなれになって了う。
この代々木の地には住民が「意志に反する転居」を強いられた歴史が実在する。作中に登場する代々木八幡宮にそれを今に伝えるものが遺されている。

作中で二人がその前を横切った鳥居をくぐり拝殿へと向かう。その道の両側に二基の灯籠が在る。その竿石部分がそれであり文字が刻まれている。拝殿に向かって左側に「大字代々木字深町ハ明治四十年十一月十一日陸軍練兵場ニ指定セラレタリ常ニ一家ノ如クナル温情深キ住民ハ移転スルノ際」右側には「各々其ノ別ルルヲ惜ミ又字ノ消サラン事ヲモ想ヒ、茲ニ燈ヲ納メテ之ヲ紀念トス  明治四十二年一月建設 良廣拝書」と刻まれている。下段には十七人が名を残している。
この土地への愛着や人々の絆の強さが伺える。富国強兵の為に国民は様々な犠牲を払わねばならず、その負担や悲しみ、惜しさも大きかった。当時の弱肉強食の国際関係から考えれば仕方無い事かもしれないがやるせない思いになる。
このような悲しい歴史が染み付いた土地である。それでも相変わらず美しい住宅街であり、陽光の中を小田急線が日常を運んでいる。
蛇足ではあるがヒロインの名は「燈かり」から来ているのではないかと考えるのは深読みだろうか?

広告

国立新美術館 軍施設の集積地

真新しい純白のデカい建物である。よくぞ東京のど真中にこれだけの土地を確保できたものだ。どうやら陸軍歩兵第三連隊の兵舎があり2001年迄は東京大学生産技術研究所として活用されていたようだ。現在は一部を除き取り壊されたが美術館のエントランスにその模型が展示してある。
ここも戦争という歴史の染みが付いた土地のようだ。
「君の名は。」ではこの場所で瀧は飛騨の写真に郷愁を感じる。まるで三葉という異なった時間を生きる人からの伝言を受け取るように。
また新美術館の最寄り駅は乃木坂駅であるが、これは日露戦争の名将乃木大将の邸宅があった事に由来する。現在では乃木神社となっている。開館前に東京に着いたので寄ってみたが立派な邸宅であった。これも軍都の名残である。

調べてみると、青山、赤坂の一帯は戦前は軍事施設が集中していた。東京は軍都でもあった。近衛歩兵第三連隊、歩兵第一連隊等も駐屯していた。代々木と同じく青山にも練兵所があった。
「東京青山1940 陽が落ちても朝はくる」(田口道子2002年5月 岳陽舎)では当時在住していた筆者が「兵隊さんの街」の様子を事細かに記している。練兵場から上がる砂埃、住宅街の行進していく軍隊、普通の人の家の隣にある軍人の家。生活の真ん中に軍隊が在ったことが解る。
また、歩兵第三連隊は二二六事件の主力部隊でもあった。政府に絶望した軍人が決起したクーデター未遂事件である。俄には想像できないがあのおぞましい事件の舞台がこの大都会なのだ。そして。「君の名は。」の回想シーンの後で高校生が決起するがその伏線が新美術館のデートであったと考えるのは深読みであろうか?
何気なく歩いていた町でふとした瞬間に遺跡に遭遇し時間を越えた伝言を受け取って了う。そこからこのように突き進めると驚きの事が転がっている。東京という町はそういう所でもある。

広告

須賀神社 三十六歌仙絵の奇跡

神社というのは時を超えたコミュニケーションの場である。石碑や絵画等が遺されており、過去からの伝言を受け取ることができる。

そのような神社の機能に着目すると確かに「君の名は。」のラストシーンには神社が相応しい場所であると分かる。神社は昔から時間を超えた出会いの場所である。だから訪れる以前から舞台に選ばれるからには何かが残されている神社であることは察していた。そしてようやく実際に訪れることが出来た。矢張あった。石碑や銅像が置かれている。そして注目すべきは「三十六歌仙絵」である。「君の名は。」でも重要な役割を果たす万葉集から採った歌もある。そして一見戦争と関係なさそうなこの絵であるが、調べてみると戦争によって運命を左右された。以前の社殿は戦災で焼失して了った。しかし、この絵は疎開していて奇跡的に無事であった。そして今、私達が目にすることが出来るのである。「君の名は。」のヒロインみたいだと感じたのは私だけであろうか。

三十六歌仙絵の複製。本物は本殿にある。

今回取り上げた作品は二作である。他の劇場アニメでも戦争や戦跡が所々に出て来る。「ほしのこえ」と「雲の向こう、約束の場所」は物語の中で戦争が深く関わっている。「星を追う子ども」では高台に高砲射撃の残骸が生々しく残っている。秘密基地内の本の背にも「帝国陸軍」の文字が見える。例外的に「言の葉の庭」は逆に変わらない場所である新宿御苑が舞台だ。戦前は皇室の庭園であり戦中に空襲で焼かれたり芋畑になった事もあったが今でも庭園であることには変わり無い。こうして見ると歴史、特に戦争と現代との繋がりをも描かれているとも見ることができる。 

広告

参考文献

「東京青山1940 陽が落ちても朝はくる」(田口道子2002年5月 岳陽舎)
「東京史跡ガイド⑬ 渋谷区史跡散歩」(佐藤昇 1992年6月学生社)
「渋谷区の歴史」(林陸朗他著1978年3月名著出版)
「四谷散歩 その歴史と文化を訪ねて」(安本直弘 1998年1月みくに書房) 

広告
シェア、拡散歓迎です!宜しくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA